秋水長天

 遊子帰客 夢断故郷雲水之間    西風古道 回首一片秋水長天

Category [オリジナル小説 ] 記事一覧

闇の塔 十壱

   第四章  暁 闇   承前「公主!?」 塔の入り口、追いかけてきた揺玉に驚きの声を上げた蒼牙は、「あなたはわたしのために命をかけてくれた。ならば――」 揺玉の繰り返した言葉に、重い溜め息をついた。「無茶が過ぎる」「わたしが無茶な女子おなごだということは、先刻承知のはずだ」...

闇の塔  拾

    第四章   暁 闇    承前「行くか、やはり」 楊駿よう・しゅんが云ったのは、婦人の亡骸なきがらを葬った後のことであった。 うす紫の風の中に立つ二人を、少し離れた場所から少年が眺めている。 絳花こうかは、敬愛する婦人の墓前で、一夜を明かすつもりらしい。 気を利かせたつもりなのだろう、姜進賢きょう・しんけんたちの姿も、そのあたりにはない。 黄昏たそがれの色だけが、美しい住人を失った、古い宮...

闇の塔 九

      第四章  暁 闇                                        八より 自室として与えられた一間で、揺玉はもの思いに沈んでいた。  細い指の間で、紅色の花がくるくると回る。髪に挿されたときには鮮やかな色合いであった花が、今はしおれ、黒ずんで見える。 同じように、揺玉の心もしおれている。所詮は異なる世界の住人。そう、蒼牙に告げられた言葉が、胸に重かった。 ...

闇の塔 八

   第三章  母子   承前 そうして――。 今日も森は、常と変わらぬ穏やかな明るさに満ちていた。 時折、小鳥のさえずりが聞こえ、小動物が枝を駆け回る姿も見える。そよ風に名も知らぬ小さな花が揺れている。 木洩れ陽を浴びて、木の間隠れの細道を辿る蒼牙の足取りは、この数日でかなり確かなものになってきたとはいえ、常の、異名の狼か猫科の獣を思わせるしなやかさは、まだ取り戻せてはいなかった。「聶じょう公子!...

闇の塔  七

      第三章  母子                                       6より 〈畢ひつ〉には神殿が無い。璞煌星はく・こうせいが国主となって数年のうちに、その殆どが全きまでに破壊し尽くされている。神職者たちも、あるものは追放、また、より多くのものが冥塔に投じられたという。頑として神殿を去ることを拒み、いずれ天からの罰が下されようと煌星を糾弾した神殿長が、建物とともに...

闇の塔  六

     第二章 《闇》    承前  淡い蝋燭の明かりを頼りに、二つの影が狭い塔の階段を登っている。足音が周囲の壁に不気味に反響し、後ろの男の抜き放った匕首が、時折り、蝋燭の灯に鈍く光る。どうやらそれで、前の男を脅しているらしい。 階段が尽きた。 二人の前に、重々しく黒ずんだ金属製の扉が立ち塞がる。 頼りなげな明かりが、その扉に刻まれた封じの古代文字を浮き上がらせた。「開けろ」 後ろの男が低く命...

闇の塔  伍

       第二章 《闇》  承前「つまらぬ」 残心の姿勢のままの煌星こうせいの唇から、チッと小さな舌打ちが洩れるのと。 くくっ……と、蒼牙の喉奥から、これは蔑さげすみとも取れる笑声が洩れたのと。 果たしていずれが先であったのか。「瞬きひとつせぬ、か」 忌々しげに云った、煌星の双手に握られた刃は、蒼牙の喉もと一寸ばかり手前で、ぴたりと止められていたのである。 獄舎に走りこんできた楊駿は、思わずその...

闇の塔  四

        第二章 《闇》     承前 一群の暗雲が、月の玲瓏の面を汚しはじめていた。 そして、その影の落ちたところから、石像が動き始めていた。 一角の獣を、翼を持つ虎を、人面の蛇を、女人の貌と上体を持つ鳥を、象った石の像が、緩慢な仕草で台座から降り立ち、二人を取り囲もうとしている。...

闇の塔  参

                  第一章 魔公子 承前「この小屋が発見されたと!?」 小者の報告に揺玉の、そして付き従う武人たちの顔色が変わった。 あの戦いから半年あまり。揺玉たちは〈畢ひつ〉にいた。 〈壁へき〉王室の残党狩りを打ち切って帰国の途に着いた璞炫はく・げんを討つべく、生き残りの武将たちを糾合して後を追い、〈畢〉の国内に潜入。機会を得られぬままに、郊外の森の外れにある、誰のものとも知れ...

闇の塔  弐

      第一章  魔公子 序章より...

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rei★azumi

Author:rei★azumi
ヒト属ネコ科 コタツ猫亜種 読書ネコ
『神鵰侠侶』で金庸にハマった、金庸初心者。
とりあえず、金庸の小説全作品読破を目指すも、突如神鵰侠侶二次小説にハマる。
さて、この先、どうなりますことやら。

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