秋水長天

 遊子帰客 夢断故郷雲水之間    西風古道 回首一片秋水長天

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神鵰伴侶

 つがいの相手    もとい、伴侶を有するということは、何やら大変に良いことらしい。そう感じるようになったのは、つい最近    人の時間にして一月ばかりの間のことである。
 それまでは、我が侠侶ともにして異類の兄弟の、遠く離れた伴侶を恋い、時に悲嘆にくれる有様を見るにつけ、あまり良いものとは思えなかった。
 我々鳥類のうちにも、番の相手は生涯にただ一羽。時に伴侶とした相手の死に殉ずるものもあるため、その孤独感と悲傷、一個の相手に対する執着は、決して理解できぬものではなかったが。
 それが   
 十六年の歳月を経て、唯一にして無二の伴侶に再会した、我が兄弟の歓喜のさまは無論のこと、あれは、やはり縄張り争いの一種なのであろうか、死傷者の多い派手で無益な戦闘の後、我が兄弟の周りに群れるようになった人間たちのうちの、伴侶を持つものの睦まじさを見るうちに、私の考えは大いに変わってきたのである。
 その、人間たちの話を洩れ聞けば、我が兄弟の養い親    ということは、人間にも郭公かっこうのような託卵の習性があるのであろうか    が育ったモンゴルという地には、人を乗せて飛ぶことができる大きさのおおわしが棲息するという。
 ならば、この私に相応しい番の相手が、見つからぬとも限らぬではないか。
 我々生物にとって、伴侶を得て子孫を残す    次の世代へと命をつなぐのは、本能であり、当然の使命でもある。
 それに、我が異類の兄弟にも、その白鳥のような伴侶との間に、営巣と子育ての時間が必要なはずであり、その期間、私が傍を離れるのは、双方に取って悪いことではないはずである。
 と云うわけで   
 我が兄弟が、同族に別れを告げて崋山を降りた直後、私も彼に別れを告げることにした。
 兄弟は、少しばかり怪訝な顔をしたが、何やら納得した様子で、
「いずれ、また会おう」
 出会った頃を思わせる快活な口調で、挨拶を送ってきた。
 無論、私が伴侶を探しに行くなど思案のほか    であろうが。
 人間ならば、おそらくは苦笑と云う形に、顔の表面を動かすところ   
 私は鳴き声を挨拶に代え、一路、話に聞いた草原の地を目指す。
 脚力の限りに疾走するたのしみは、かの若い兄弟とともに旅をするようになってから得たものである。翼が    全身の羽毛が風を切り、周囲の景色が瞬く間に背後に流れ去る。
 空を翔ける感覚と云うのも、このようなものであるだろうか    と考えること自体、私が剣魔独孤求敗と云う、そして神鵰大侠楊過と云う、自分と同格の異類の友を持ったことと同様、鳥類のありようからは大いに逸脱しているのかもしれないが。
 そうして、このようにものを考えること自体。


 疾走の最中、そんなことを考えながら日を重ねるうち    無論、途中で狩りもしていたので、そのあたりは懸念は無用である    周囲の景色は大きく変わり、かつてわが兄弟をいざなった海を髣髴ほうふつとさせる、視界一面の風に揺れる草の連なりと地平の限りを覆う広い空、点在する羊の群れを経て、険しい岩山に達する。
 話しに聞いた通り、黒い翼の鵰が群れていた。
 が、思っていたより小さい。
 あれでは私の伴侶には、いささかならず役者不足のようである。
 すこしく失望しかけたとき、侵入者に気付いたらしい黒鵰くろわしの群れが、鳴き声を上げて、一斉にこちらを向いた。縄張りを荒らされまいとする生き物の本能    ならば、それを退け、この地をわが版図にしようとするのもまた、生物の    雄の本能である。
「いいぜ。遊んでやるよ」
 我が兄弟・楊過ならば、ニヤリと笑んでそんな言葉を口にするところであろうか。
 クワッと威嚇いかくの声を挙げ、私は向かってくる一群に対し、内力をこめた翼を一打ちする。
 巻き起こった旋風に打たれ、黒鵰の群れは鋭くも情けない泣き声を上げると、散り散りに逃げ散ってゆく。敵わぬと見れば、速やかに撤退。命を奪い合うところまでゆかぬのが、我々が人類よりはるかに優れている点である。
 遊びにもなりゃしねぇ。やはり我が兄弟なら、そう口にするところか。
 私がそんなことを思ったとき、のそり    黒鵰の群れていたあたりの岩陰から、さらに黒い何かが姿を現し   
 私は、彼らが群れていた理由と、おのれの旅が無駄ではなかったことを知った。
 彼らより一回り以上大きな体躯に、漆黒の艶のある翼。がっしりと逞しい、鋭い鉤爪を具えた足と、鋭いくちばし。それ以上に鋭く光る眸を持った、強く、逞しく、健康そうな、それは一羽の雌だった。
 強くて健康。伴侶を選ぶ理由として、これ以上のものはない。
 折りしも繁殖の季節。
 そうして、我々の求愛は、常に率直なものである。
「私の卵を産んでもらえないだろうか」
 求愛の言葉に、雌は高く声を上げて応えた。


 そうして   
 我々は、営巣と子育ての場を、モンゴルの岩山ではなく私の旧居である独孤求敗とともに暮らした岩屋に求めた。
 縄張りを守り外敵を退けるなど、私にも伴侶にも易々たることではあるが、外敵、すなわち生息する同族の数が多いということは、餌の数が少ないということにもなる。
 ならば、同族がおらず、餌の豊富な場所こそが、子育てに相応しいということであろう。
 岩屋とその周辺は、幸いなことに伴侶の気に入り、残念なことに、無事にかえった雛は一羽だけであったが、旺盛な食欲と順調な成長ぶりを見せている。
 ほどなく、ふわふわした白っぽい羽毛も、私か伴侶のそれに似た、黒い鉄の羽に生え変わるであろう    と、岩山に、高く鋭い、懐かしい声が響いたのは、そんな頃であった。
 岩頭に上ってみれば、岩間の道を辿ってくるのは、懐かしい黒白の影。
 どうやら雛    もとい、子供は伴っていないようだが、人類が年毎に子供を得るものでないことも、子供の成長が我々のそれに比べてひどく遅いことも、私は漠然とではあるが知っている。
 呼び声に応えて姿を見せた私に、
「鵰兄! 久しぶりだな。元気だったか?」
 わが兄弟・楊過は弾んだ声を上げ、私たちはしっかりと抱擁しあった。
 直後、私の呼ぶ声に応じて、のしのしと現れた二つの影に、
「ひょっとして……あんたのかみさんと子供か?」
 驚きの声を上げる。
「そうか。よかったな。おめでとう」
 心からの祝福の言葉とともに、私の羽毛を撫でたあと、ちらりと白い伴侶を顧みて、
「子供についちゃ、先を越されちまったな」
 ぼそり。口惜しそうに囁いたのが、何とも可笑しく、そうして誇らしく、私はいつものように胸を張った。


















えー。
以前に『アクセス解析』にも書きましたが、どういうわけか『神鵰伴侶』で検索をかけてこられる方、チラホラとおられるんですね。
で、その検索に“これ”が引っかかったら、どんな顔をされるやらと、ちょっと悪戯っ気を出したのと、
あの『カンフー少女』に登場する、等身大でお茶目な神、兄と比べると、いくら八百年間遊んでくれる人がなかったからって、随分腕が落ちてるようだし、ひょっとして二代目か三代目?
と、想像(妄想?)して、な~んとなくアイディアを練っていたのが、このたび、ボキャの神様の降臨で、かくは相成りました。
少しは鳥っぽい発想が現れてるといいんですが(笑)

そうして、楽しんでいただけるといいんですが……



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| 神鵰侠侶二次小説 | 2011-08-16 | comments:6 | TOP↑

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神鵰侠侶 SS  永遠を願う

「こんな岩屋の中でも、埃ってのは溜まるもんなんだな。すっかり忘れていたよ」
 しかも、十六年分だ。云う楊過に手には、木の枝を束ねた箒が握られていて、慣れた手つきで岩室の床に分厚く積もった埃を掃き取ってゆく。
 それは、かつて古墓派に弟子入りした二十数年前には、ごく当たり前の行為だったはずだが   
「どうかしたか?」
 布を手に、石造りの卓を拭きかけたまま、じっと自分を見ている小龍女に、楊過は怪訝な視線を向ける。
「あ。いえ、何でもないの」
「奥さん」
 軽く、嗜める口調で呼ばれ、ふふ……と、小龍女は小さく笑いを洩らす。
「まったく、あなたときたら。本当に、大したことではないの。ただ、なんだか不思議な気がして」
「ん?」
「本当に……大人になったのね」
 しみじみとした口調で云われ、楊過は思わず失笑する。
 古墓派に入門した  正確には転がり込んだときの楊過は十四歳。当時十八歳だった小龍女に取っては、まさに、子供に過ぎなかったろう。
 その意識は、二人の間ら柄恋人同士から夫婦にと移行しても、どうやら、さして変わることは無かったらしい。二十歳を過ぎてからどころか、十六年を経て再会してからさえ、時折『この子』呼ばわりされた気もするのだが   
「それに、江湖の大英雄、神鵰大侠が、そうして床掃除だなんて」
「あんなのは虚名だよ」
「そんなことはないと思うわ。あれほど多くの人が、あなたを知っていて、あなたを敬っている。ねえ、本当によかったのかしら?」
「何が?」
「古墓派に入門した頃、あなたは周囲の人間を見返したがっていた。街で賑やかに暮らすことを望んでいた。どちらも手に入ったのに、こうして古墓に戻ってきてしまって」
「何度同じことを   
 いいかけて、楊過はふと、口許に淡い笑みを刷く。
「お前が望むなら、何十万回でも云うよ。俺の望みは、お前が俺の傍にいてくれること。こうしてお前と二人、穏やかに暮らすことだ。そのほかは、何も望まない」
「過児……」
「それより、さっさと済ませちまおう」
 再び、箒を使い出す楊過に、焦ることはないのよと、小龍女は穏やかな口調で告げる。
「それより、少し休みましょう。これから    時間は充分にあるのですもの」
「ああ……。そうだな。時間は充分にある」
 低く、呟くように返しながら、楊過の視線は、何とはなしに妻の白い姿を追う。
 目を離せば、その姿が幻となって消えうせてしまうかのような、そんないくばくかの不安をこめて。
 人は常に、時の流れのうちには、昨日と同じ今日、今日と同じ明日が続いていると信じて已まない。さながら、滔滔と続く長江の流れのように。
 しかし、その長江にすら果てはある。
 まして、人の営みの、平穏な日々の繰り返しが、永遠に続くことがありうるだろうか。
 が、そのことを知っているのは、僅かに覚者、賢者と呼ばれるものばかりだろう。そうして、その賢者たちにすら、時の大河の果ては遥か前方のものであり、変化の訪れも緩やかなものと予想されているはずだ。
 だが   
 いや。だから  
 幾たびも、指呼の間で僅かな希望を断ち切られ、さながら激流に似た運命の川に翻弄された二人が、このささやかな平穏の、永遠に続くことを願うのは贅沢なことだろうか。
 それでも、せめて、
 この凪に似た穏やかなときの、あと五年、十年    いや、ほんの一刻でも長く続くことを、願わずにはいられない楊過だった。

| 神鵰侠侶二次小説 | 2011-06-29 | comments:0 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説  黒白 (後編)

前編より


「どうした、阿飛?」
 楚家から半里あまり。幾たびも邸を振り返りながら道を辿る少年に、楊過は問いかける。そういえば、最初に董氏の顔を見たときから、何やら様子がおかしかったが  

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2011-01-24 | comments:6 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説  黒白 (前編)

    過児。
 闇の中、細く優しい声が呼ぶ。
 過児    と。

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2011-01-23 | comments:2 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説 元宵節夜話 夢灯篭

 夢のようね。
 その人は口にしたけれど、わたくしにはその人のほうが    いいえ、その人たちのほうが、美しい夢のように見えた。
 氷雪の化身か、人界に天下った女仙かと思えるほどの白衣の佳人と、その夫らしい黒衣の美丈夫。
 元宵節の夜の中、無数に吊るされた贅と粋を凝らした燈籠よりも、綺羅を飾った見物の誰彼よりも、その二人は美しく輝いて、わたくしの目に映った。


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| 神鵰侠侶二次小説 | 2011-01-08 | comments:4 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説  星光

 夜遅くに目が覚めてしまったのは、父さんと母さんのせいだ。楊鴻ようこうは思う。
 いや。“せい”というのは正しくはないかもしれないが、それでも、原因は両親にあると思う。
 なぜなら、夜遅くに目が覚めててしまうほど喉が渇いたのは、母さんが作ったご飯が、やけに塩辛かったせいだし、母さんがご飯の味付けを間違えたのは、外から帰ってきてからずっと、父さんの様子がおかしかったせいだ。
 そうして、父さんの様子が変だったのは   
 と、そんなあれこれを考えていると、少なくとも、ぽつんと一人、夜の中に座り込んでいる心細さが、少しはまぎれるような気がした。
 昼でも真っ暗な古墓の中とは違い、夜の空は明るい藍色で、数え切れないほどの星がまたたきながら、楊鴻を見下ろしていたけれど。

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2010-11-03 | comments:8 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説 香風

どうして違えたりしたのだろう  
 絶情谷の谷底深くの茅屋。
 初めて愛を交わしたあと、楊過の腕に抱かれたまま、小龍女は思う。
 運命のあの日。終南山のあの木の下。
 視界を閉ざされていたとはいえ、自分にふれた、あの道士の手を、この世の誰よりも愛しい夫のものだなどと、なぜ、思い込むことが出来たのだろう。
 優しく力強い手も、心臓の鼓動も、何もかもがこんなにも違うのに。
 どうして……。

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2010-09-27 | comments:4 | TOP↑

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神鵰侠侶二次小説 帰還

「すっかり変わってしまったのね」
 深緑に覆われた谷と山を眺め、小龍女は呟く。
 あの日、蒙古の襲撃と猛火にさらされた終南山と、それに連なる古墓の周辺の谷は、十六年の歳月に新たに繁った草木で、その眺めを一変させていた。

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2010-09-20 | comments:9 | TOP↑

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神雕侠侶二次小説 無題

「なんて不釣合いな夫婦なんだ」
 韓由は声に出して、それでも、当人たちの耳には届かない程度の声で呟いた。
 数間向こうの宿屋から出てきた夫婦者の夫の方は、どうやら江湖者。今の言葉が耳に入れば、些かどころでなく不愉快なことになりそうなのは、韓由にでも察しがつく。
 が、しかし、それにしても、

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2010-07-27 | comments:8 | TOP↑

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めぐり逢う日

「過児。あなたなのね!」
 そう口にした、自身の声で覚醒した。
「夢……」
 呟いて、小龍女は床に上に半身を起こし、ほう     と、ひとつ、ため息を洩らす。
 茅屋の壁の隙間から洩れる光を眺め、もう一度、重く嘆息した。

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| 神鵰侠侶二次小説 | 2009-06-07 | comments:6 | TOP↑

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