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『風よ、万里を翔けよ』

実は、ひょんなことから『独孤加羅(どっこ・から)』
にハマりまして。
まあ、すでにタイトルでネタバレしてますし、人物相関図とWikipediaを見れば、歴史的な結末はわかるわけですが、ちょいと、私には悪いクセがありましてね。小説関係、最終的にどうなるかが気になって、途中で結末の2ページくらいを読んじゃうことがしばしば。(でも、ミステリーなんか、そこで犯人がわからなくても、それは気にならない――ということは、気になるのは後味の良し悪しなんでしょうね)
で、このクセ、ドラマの方にも当てはまりまして(^^ゞ
視聴を始めた頃、公式サイトの「あらすじ」をざっと通読。
したら、ちょいと待てよ、ということになったワケです。
(これ、ホント、あらすじだけを読むと絶対に誤解しますよ(笑)

結末の方はネタばらしになるので敢えて書きませんが、確か隋は隋自ら倒れた――というか、2代皇帝である煬帝(ようだい)が自身で潰し、従兄弟で唐の初代皇帝となる高祖・李淵(り・えん)は次男坊で後に二代皇帝となる太宗・李世民(り・せいみん)にお尻を蹴飛ばされるようにして、ようやくったハズ。

……というコトで、手持ちの本の中では、そのあたり、一番詳しく書いてあるコレを引っ張り出してみました。(というかコレ、何読目だろう……)
で、一読――やっぱ最近の田中芳樹サン、衰えたな~~じゃなくて!
筆力と書き込みの密度に感嘆。
(まぁ、考えてみれば田中さん、○○戦記とか、ホラーミステリーだけどアクション関係とか、体力の要りそうなものばかり書いてこられましたからねぇ)

これ、実は子供のころから読みたいと思っていた『木蘭従軍』を題材にしていたので、初版で飛びついたんですが、実際の内容はと云うと、ちゃんと『隋書』や『旧唐書』などの史書に取材した、むしろ『隋唐演義』なんかより史実に近い、『随末演義』と云うべきものなんだろうな、と感じました。
主人公の木蘭(もくらん)を中心にせず、平均的にあらすじを書いて行くと、随の側からの見た崩壊の有り様、書けちゃいますもの。

さて。簡単ににあらすじを書いてみますと、
とある村に、戦争で傷を負って明日不自由になった花(か)と云う姓の男が住み着胃て所帯を持ち、読み書きができることから村の人たちの代筆なども引き受け、花のおじさんと尊敬されて暮らしておりました。
その花家の庭には見事な木蘭の木がありましたが、それは初めて、それも満開に花をつけた時にようやく生まれたのが、本書のヒロインとなるっ娘。で、それにちなんで木蘭(もくらん)名付けられた彼女は、某知人の娘さんのように(笑)男の子のように元気な女の子だったので、父に武芸を仕込まれ、元気に健やかに育ちます。



ところが、この木蘭が17歳になったとき、今上帝である煬帝(ようだい)が起こした『征遼之役』(せいりょうのえき)のため、突然老父に徴兵令が💦
(この時代、50越えれば老人なんですよね、たしか。昔から70まで生きる人は稀だってことで、古稀こきなんて言葉があるくらいですから)
ですが、当時の徴兵令なんてものは、日本のそれとは違って適当なもので、人数さえ合っていればよかったわけで、父親が年を取って軍役に堪えないから、代わりに息子が出兵しますと云うのでも、息子が15歳以上ならノープロブレム。なので木蘭、男装して父の代わりに長男として出兵します。
そこで、以後、朋友として何かと助けてくれる賀廷玉(が・ていぎょく)、沈光と(じん・こう)知り合い、賀廷玉とともに沈光の副官となり、手柄を立て、名将で仁と義の人でもある長須多(ちょう・すだ)の元で賀廷玉とともに華南討捕副士として活躍。歴史上の人物であり、『隋唐演義』の登場人物でもある秦叔宝(しん・しゅくほう)や羅士信(ら・ししん)とも同僚になります。

が、その間に、即位当時は剛毅な明君と思われていた煬帝は、3度に渡る『征遼之役』の失敗を含め、旅行先への行宮(あんぐう)と称する豪華な宮殿の建築、各地から未婚の女性を献上させることで、後世処女狩りと呼ばれる行為などを行い、その間、国の経済状況を顧みることもなく、おかげで国はボロボロ。各地に反乱が相次ぎ、それらは弱肉強食の常で強いもの、賢いものが勝ち残り、勝手に王やら皇帝Yらを名乗る始末。

そんな中、煬帝からは称賛されても補充の食料も武器も送られてこない(これは悪意ではなく、単に思いつかなかっただけであろうと田中センセイは書いておられますが、だったら周囲の人間が気を利かせろよな~💢)
それでも随のため、というよりは民を守るために、国の中枢をである華南を守って戦い続ける長須多に感激したある偉い人が、武器や食料の他に三万人の新兵を送ってくれますが、この三万人が仇となって長須多は彼らを助けるために戦死。
……これは、小さい会社で新人の指導に当たったことのある方ならご理解できるでしょうが、人数は増えても相手にはゼロから仕事を教えなければいけないわけで、これは武術家が素人を守りながら自分と同格以上の相手と戦うのと同様。武術家ならば傷を負うか相手が強ければ死にますし、お仕事の場合、相手がある程度を覚え込んでくれるまでは能率が落ちるわけです。

というわけで尊敬する上司を失った木蘭と賀廷玉でしたが、今度は沈光の好意で再び彼の副官に迎えられます。
が、その間にも煬帝の暴走は止まらず、ついには彼に不満を持つ側近たちの手で弑逆されます。
その首謀者が、煬帝の恩義を最も深く受けた家系のもので、こればかりは許せないと憤った沈光、木蘭たちを偽って故郷へ帰し、自身は志を同じくする麦孟才(ばく・もうさい)らとともに斬り込み。尽く討ち死にを遂げます。

沈光に置き去りにされた形となった木蘭たちは、姓名を隠して反乱軍の一つである竇建特(とう・けんとく)の元に紛れ込み、結果として朋友である沈光の仇を討った後、木蘭の故郷へと向かい、そこで彼女はようやく男装を解き、賀廷玉を驚かせます。


それにしても、「戦争・建築・女色」ってのが皇帝や王が国を治めていた時代の亡国の三原則だって、ある時ふっと思ったんですが、煬帝、女色だけは才色兼備で親の方が見込んで息子のヨメにした蕭(しょう)皇后という佳人がいたおかげか、殷(いん)の妲己(だっき)や楊貴妃みたいな傾国の美児が現れなかったおかげか、紂王(ちゅうおう)とか唐の玄宗みたいに特定の女性に入れあげることこそ無かったわけなんですが、処女狩りとかやらせて後宮に美女を集めてますから、けっきょく3つとも盛大にやってますものね~。
つかご両親、いっそこちらを長男のヨメにしておけば皇太子だった長男、女性関係でおかーさんの不興をかうことも廃嫡されることもなく、中国の歴史は変わってたかもしれません(煬帝は次男坊)

まぁ、大運河を通したというのは功績ではあるんですが、特に亡国の原因となったのが三度にわたる『征遼之役(せいりょうのえき)』――っておとーさんの文帝=楊堅(よう・けん)が失敗した高句麗(こうくり)討伐(この時は高句麗の方が先に仕掛けたんだから、討伐で良いんでしょうね)を、自分が成功させて、多分おとーさんを越えたという名声が欲しかったんでしょうな。

で、この『征遼之役』ですが、実は、煬帝があれほど“アホの子”じゃなかったら、初回で勝ててた戦なんですよね。
というか、高句麗の本気でなりふり構わない策略――負けそうになると「降伏しますから、準備が整うまで猶予を」つって平身低頭しておいて、その間に城の壊れたところを修理するとかして、再度軍備を整えてまた攻めて来る――っての、2回目か、せめて3回目で気付けよな~(仏の顔も三度というくらいだし)
ホントもう、際限なく引っかかってやんのヾ(--;)

そういう、現代に言葉に置き換えると、退役軍人まで引っ張り出すという国家総動員的な、1回だけでも相当な国の負担になりそうな戦争を何度もやった上、国力が衰えて来ているの気付いているやら居ないやら、あっちこっち(最終的には江南)に、豪華な宮殿を建てさせてますし、親征だの行幸だのにも超豪華な舟やら馬車やら作って、お妃や女官たちを同行させてますし……全国統一後の皇帝なんてモノは、戦争なんてモノは将軍たちに任せて、宮殿の奥に収まっておってくれた方が、迷惑じゃなくてよいですな、本気で(^^;)

あと、自分の感情に任せて、罰するべきを罰せず、賞するべきを賞さず、即位から僅か6年で国がガタガタになってるのも意に介さず、おかげで民は塗炭(とたん)の苦しみにあえぎ、各地に反乱が勃発(ぼっぱつ)し、国を思う宿将驍将(ぎょうしょう)は報われずに討ち死にし、臣下には背かれ――李世民(り・せいみん)が李淵(り・えん)を突っついて起兵させたのも、煬帝の命を救ったのに、約束された褒賞がなかったので、あんな約束破りは皇帝に相応しくないと思われちゃったからだそうで、李世民がいかに、後に「人中の龍」と言われた人とはいえ、その時点では十代の若者に見放される皇帝ってどうよ(^^;)

挙句、『征遼之役』以来特に重用した宇文(うぶん)家と来(らい)家の内、宇文家の化及、智及の兄弟を中心とする、煬帝に不満を持つ廷臣たちによって弑逆(本の中では扼殺)されるわけです。
(ちなみに来家の方は、煬帝を守ろうとして、父親と、その時宮殿にいた息子たち、全員討ち死に)

で、本を読んでゆくと、明君から暗君へとわずか6年で大暴落した煬帝って、ちょっと頭がいいだけのお子ちゃまだったんだな~~と思ったら、田中芳樹センセイも作中で、彼のことを、過ちを犯したことはわかっても、それをどうすれば収集できるかもわからない程度の幼児と評されておりました。
なるほど、子供だって、どう振舞えば親の気に入るかくらいは、わかりますものね。
というより、子供って親が思うよりもっと本能的に、親の顔色観てます。
(でもって、親って何があっても自分の味方なんだな~と思えた子って、幸福なんですね)
でも、こんな皇帝――というよりは、随という国自体に殉じて宇文兄弟たちと戦って討死した人たちもいるんだもんな~

ということで、この本を読んで最初に一番印象に残ったのがそのシーン。
特に沈光(あざな総持そうじ)の最後で、ここはWikipediaと比較すると少し違っているので、田中センセイの創作が入っているんですね。

若くて粋で美男で腕が立って、『肉飛仙』の異名を持っていた――つまり生身の人間なのに仙人のように身軽だったということは、我々のネット江湖の住人の感覚からすると、軽功の達人だったかなと思いますが――というのは史実のようですが、煬帝が弑逆されたことを知らされた彼、それは自業自得だけれど、その首謀者が煬帝から最も恩恵を受け、他の誰が背いても彼らだけは忠誠を尽くす義務を持つ宇文家の兄弟であったとに激しい怒りを覚え、彼らを討って、現在囚われの身である蕭皇后を救い出そうという麦孟才に協力することを約束します。

が、この計画、さらに協力者にしようとした者の中から宇文化及たちにチクったヤツが出て、実行に移った時にはもう、バレてるんですよね。

それを予感してか、あるいは、そこが自分たち死に場所になると感じてか、沈光、二度に渡って自分の副官を努めている木蘭と、常に彼女とワンセットで扱われている賀廷玉(👉彼、多分、最終頁よりあとで、木蘭のダンナになります(^w^)を、生き延びさせるために口実を設けて計画から外し、あの副官の小柄な方は女性で、だから殺したくなかったのではと問う麦孟才に、生来不敏なので全く気付きませんでした――って、これ小学生でもわかる嘘だ(笑)
多分口にしなかっただけで、初対面の時から気付いてたんだな。
皇后から煬帝を説得してもらおうと、後宮に入り込ませるために、木蘭を女装(!)させてますし。

……という粋人(すいじん)だし、三十近くまで結婚しないで(まあ、時代が時代なので結婚する暇がなかったのかもそれませんが(^^;)、妓楼に通ってたという遊び人だし、といっても多分もうあの頃の高級妓楼の妓女は、江戸時代初期の御免色里(江戸吉原、京島原、大阪新町・長崎――は丸山でよかったっけ?)の太夫のように芸事や教養に優れた女性ばかりだったので、教養人のお客は、席に呼んでお話するだけで充分に遊べたわけなんですね。
という予断は置きまして、

「もう甲冑には飽き申した。馬もそのようでござれば」
と、官服姿で、途中の農家で貰い受けた桃の一枝を手にした沈光、魏の曹植の『白馬篇(はくばのうた)』を口ずさみつつ死地に向かいます。
(う~ん。ここ、絵に出来るだけの腕前があったら描いてみたかった。墨絵風にして、桃の花に淡く色を加える程度で、背景代わりにその『白馬篇』のうちの2行ばかりを添えて)
で、時は晩春、淡く霞がかかった夜空には細い月。月下の道には一面散り敷いた桃の花びら――って、隆慶一郎先生だったら、こんな夜に死ねるなんて、なんて贅沢な、と書かれただろうなと思ったら、
『これほど佳い夜に死ねるのは慶賀すべきことだ、と、沈光は思った』
と、ちゃんと本文に書いてございました。

で、沈光、麦孟才は無論、それに従った将兵たちも尽く壮絶な討ち死にを遂げるのですが、相手方十万に対し沈光に従った部下だけで八百といいますから、全部合わせてもおそらく千単位。それで敵に甚大な被害を与え、沈総持だけで百人は斬ったのではないか――といわれてましたから、いかに全員が果敢に戦ったか――というより、隆慶一郎先生が書かれるところの死兵だったんでしょうね、みんな。

もう一つの印象的な個所は、木蘭と賀廷玉たちが、任地へ向かう途中で洪水に遭い、水に流されてきた子供を木蘭たちが救うシーンだったんですが、今回読み返したら、さらに印象的――というより衝撃的。
洪水は天柱山が崩れたことによる黄河の逆流と、下通から流れて来た水とがぶつかったことで――いやぁ、向うの河川ってのが、そもそもが日本人じゃ想像がつかないくらいでかいんですよね。
これはもう、洪水だけでも津波の比じゃないな💦

それにしても、いかに大雨でも山一つ、それも煬帝が船や宮殿の建築のために木を切らせまくって丸裸になっていたとしても、天柱山――天地の間を支える山と名付けられた巨山が、目の前で見る間に崩れて行くって……。
これは木蘭ならずとも隋の滅亡を予感するわけだ。

煬帝、即位当時は明君と思われていたのに、この頃には自分がボロボロにした隋に尽くしきって死んだ賞するべき人を賞せず、自分のお気に入りや、いい気分にしてくれた相手にだけ、どんどん賞を与えるという無茶苦茶をやってましたしね。
本拠地を放り出して、お気に入りの江南へ行ったきり、帰ってゆかないし(-“-;A

まあ、無愁天子と呼ばれて、国の文武の柱を二本とも倒し(その武の方が蘭陵王(らんりょう・おう)最後のころには宮中の犬猫にまで王の称号を与えていたと云う、多分琅琊榜(ろうやぼう)ならぬ昏主榜(こんしゅぼう=バカ皇帝ランク)を作ったら、トップスリーには入るだろう北周最後の皇帝よりゃマシですが。

ともあれ、発売当初は販売促進目的でしょうが、表紙とイラストに可愛らしい絵を描く漫画家さんを起用したせいで、ヤングアダルト向きと思われて、かなり損をしたであろう本書。読んでみれば、わかる人間にとっては堂々たる歴史書――創作も入っているからむしろ『随末演義』か――でありました、って、上にも書いたっけ(笑)

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rei★azumi

Author:rei★azumi
ヒト属ネコ科 コタツ猫亜種 読書ネコ
『神鵰侠侶』で金庸にハマった、金庸初心者。
とりあえず、金庸の小説全作品読破を目指すも、突如神鵰侠侶二次小説にハマる。
さて、この先、どうなりますことやら。

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