秋水長天

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雪山飛狐 第5話、6話

えー。
世間では、吊り合わぬは不縁の元、あまり生活環境の違う者同士の結婚はよろしくないと申しますが、
このご夫婦の場合は、そればかりが原因でもないようですな。

ともあれ、今回は苗家の家庭崩壊のお話です。
それにしてもこれって、現代でもありそうな話ですねぇ。


さて。



妻の南蘭が妊娠したことから、苗家荘に帰った苗人鳳(びょう・じんほう)、
まもなく、可愛い女の子も生まれて、本来なら絵に描いたような幸福な家庭が出来上がるはずだったのですが、
これが数年も立ってみると、夫婦間には深ぁいミゾが出来ているわ、経済は破綻しかけて、田畑の一部を手放そうかという話は出ているわと、とんでもない状況になっておりました。

それというのも……

その家の奥様になったのだから当然のこととして、家計の切り盛りはお前に任せるといわれた南蘭、
「お金を使っていいの!?」
嬉々として、家中の家具を自分好みの高価なものに取り替えるやら、
子供を産むのは痛いからと、一人しか産みません宣言をするやら……
どれだけ世間知らずなんだっ!? というか、
本当に“子供”のままで、お嫁に来ちゃったんですね、この人。

(それにしても、良家のお嬢様で、すでにお母さんが亡くなっているのなら、乳母やなり年嵩の侍女なりが付いて教育をして、嫁入り先にまでくっついてくるハズなんですが、父親と一緒に旅をしているときも、一行の中の女性は彼女一人。どうなってるんでしょうね?)

しかも、武芸や乱暴なことが大嫌いで、(その、旦那の武芸に助けられたというのに)
子供の前で武芸の稽古はするな。かと言って、外へ稽古はしに行くな。
苗人鳳ならずとも、どうすりゃいいんだと言いたくなります。

が、

悪いのは南蘭ばかりではなく……
というか、こういう精神的幼な妻をきちんと教育もせず、ただただ言いなりになって、好きにさせておいた苗人鳳にも、かなりの責任はあるようです。
まあ、どう教育したら良いのか判らなかった――というのはあるんでしょうが、
それにしても、うちの家計費は年間でこれくらいだから、この範囲内でやりくりをしてくれ、くらいは言っておけば、少なくとも頬紅ひとつで、あそこまでこじれることもなかったでしょうが。

(結局、奥さんのしたいようにさせて、裏で苦労を全部背負ってる旦那って、奥さんを大事にしているようで、実際は一人前扱いしていないのかも)

しかも苗人鳳、夫婦仲が上手くいっていないことに心を痛めてるのは判りますが、胡一刀夫妻の位牌の前で酔って愚痴って……
しかも、よりによって一番聞かれてはならない台詞を聞かれたりして。
(ここのところの間の悪さというか、脚本の上手さ、感嘆いたしました)

というところへ、やってきたのが田帰農。
この男、真の目的は、例によっての李自成の宝の秘伝書狙いで、
苗人鳳が手に入れた宝刀(江湖の噂ってのは、何だってこう足が速いんだ(^▽^;)が原因で、鉄花会と揉めたとの触れ込みで、一応、怪我なんかもしてみて、苗家に転がり込んだんですが、
夫婦仲がしっくりいっていないのを見て、ここが狙い目と一計を案じます。
(こういう悪知恵は働くんだから、この男(-_-;)

そうして南蘭にターゲットを絞り、
生活が苦しいと聞いたけれど、兄貴にはプライドがあるだろうからと言って、そっと南蘭にお金を差し出し、
土産だと、高価な江南の紅白粉を送り、
子供(若蘭)のフランコをこいでやり、
こっそり、でも南蘭の耳には入るように琴を奏で、
自分も本来は武芸や争いごとは嫌いだとまで言うんですから、
これはもう、理想の男! というか、本来はこっちの方がタイプだったんだわと、思わずよろめいてしまう南蘭。

と、そうこうするうちに、決定的な事件が起きてしまいます。
それは、田帰農の手下(?)による、鉄花会を装った苗家荘への放火。
これは、火事になれば苗人鳳は必ず秘伝書を隠した大切なものを持ち出すに違いないとのもくろみによるものでしたが、
ここで苗人鳳、致命的なことをやらかしてくれます。
というか、これはもう、百人中百人までが、苗人鳳が悪いというでしょう。

だって、

火事の中、真っ先に胡一等夫妻の位牌を持ち出したのは、まあ、百歩、二百歩譲って、良いことにしましょう。
でも。でもですよ。
そのあと、妻子の安否を確かめることもしなければ、誰か家人に「奥様とお嬢様を」と言いつけることもしないで、犯人らしい人影を見かけたら、追っていっちゃうんですよ、この人。
こ~れ~は、何ぼなんでも夫と父親に加えて、家長も失格なんじゃないでしょうか。
(しかも、その前に、お前たちは俺が守るって言ってたのに~(^_^;)
で、結局、火の中に取り残された妻子は、田帰農に助け出されてますし。

これはもう、南蘭ならずとも、普通のヨメでも家庭争議――というか、三行半(みくだりはん)モノでしょう。

という次第で、苗人鳳から心が離れた――というわけでもないのかな? ともかく、ショックを受けた南蘭、巨大な下心つきとは夢にも思わず、自分に優しくしてくれる田帰農の誘いに乗り、駆け落ちを決意してしまいます。

で、ここのところの、
「母さま、悩みがあるなら話して。私の悩みも教えてあげるから」
という、幼い若蘭とのやり取り、
眠っている苗人鳳に自分の心情を語り、幾たびも叩頭するシーン、
実は眠っているふりで、背中でそれを聞いて、じっと耐えている苗人鳳、
それぞれ、非常に泣かせるシーンなんですが、

苗人鳳の寝台の枕もとの壁に、『打遍天下無敵手(だへんてんかむてきしゅ)』ってナニ、
打遍天下無敵手って。
しかも、金文字で(^▽^;)
もう、もう、泣けるシーンで笑いを取っちゃうのは、張P作品だけで十分です。

さて。

そうして、密かに家を出て行った妻の後をつけた苗人鳳、剣を手にしていたからには、二人を斬るつもりだったのでしょう。
が、二人の濃厚なキスシーンと(武侠ドラマシリーズでは、初めてじゃないのかな?)
南蘭に見せ付けるためなんでしょうが、その場にはいない自分に叩頭して詫びる田帰農の姿に、
そのまま姿を見せずに、家へ帰ってしまいます。

が、何もいらないから母様に戻って欲しいと若蘭に泣かれ、
母様が戻らないと言ったら諦めてくれと言い聞かせ、南蘭を追うことに。
(ここで、父親の言葉にうなずく若蘭の賢さが切ない(T_T)

が ―― 一応は少なりとは云え荘園なんだから馬か馬車くらいはあるんでしょうに、雪野中を一輪車(猫車というのね)というのは……
『子連れ狼』か、アンタは!? って思っちゃいました(^▽^;)
(子連れ狼の箱車には、相当色々な仕掛けがしてありましたが。まさか、あの猫車には?)

一方、つい、魔がさしたかのように田帰農と逃げてきてしまったものの、落ち着いてくると、残してきた娘の顔が浮かび、次第に憂い顔になる南蘭。
そんな南蘭に、苗家に伝わる大切なものはちゃんと持ち出したかと聞く田帰農。
(せっかちというか、所詮は底が浅い男というか……)
ここで南蘭、ようやく田帰農の下心に気付き始めたようですが……
(でも、家に戻らないんだモノな~。戻ればいいのに)

ということで、この苗夫妻について思ったこと。
二人とも、決してお互いを愛していないわけじゃないんだけど、その“愛”を、相手にわかるように表現する方法を知らなかったんですね。
じゃあ、お前は表現方法を知ってるのかって言われると、私も知らないケド(^▽^;)
っていうか、改めて考えてみると、これがなかなか難しいんですケド。
ただ、こう、ちょっとしたね、
例えば、奥さんの手料理を褒めて、又作ってほしいというとか、
(失敗しても、努力してることを褒めるとか(笑)
旦那さんがしてくれたことに(少々気に入らなくても)感謝の気持ちを述べるとか、
日常のちょっとしたことを相談しあうとか、
そんな些細なことの積み重ねが、夫婦とか家族とかの絆を強くして行くんじゃないのかな?
(胡一刀夫妻のあの絆だって、一朝一夕でできたものじゃないと思いますし)
せめてこのご夫婦、誰か身近に相談相手がいてくれればねぇ。もっと違った関係が築けてた――ら、そもそも、この話が出来上がりませんが(笑)

というところで、話は変わって、胡一刀夫妻の命日に墓参りに訪れた平阿四と胡斐。
ですが、どういうわけだか町の中には、あの日の長白山の宿の関係者がウロウロ。
しかも、そのうちの一人(陶百歳だったかしら?)の後を平阿四がつけている間に、
食堂に残した胡斐が、人もあろうに、もと獣医の閻基を相手に呑み比べ。
(この時代には、未成年の飲酒を禁じる法律はありませんでしたからね(笑)

これ、一人で食堂に残された胡斐が、怪しまれないために、よりによって酒を追加オーダーしたのに閻基が乗っかってきたんですが、
ばれないようにその場から胡斐を連れ出した平阿四、知らなかったとは云え父親の敵を相手に酒を飲むとはと、思わず胡斐を叩いたあと、武芸も知らない自分が、どうやって胡斐を育て、守り通せばよいのかと、泣き出してしまいます。
(しかも胡斐が、絶えず逃げ隠れしている割には豪胆な子で……)

そんな平阿四のことを、男の中の男だと、父母の墓前に告げる胡斐。
何やかやといっても、良い子に育っております。

という胡斐、平阿四組と、娘を猫車に乗せた苗人鳳、胡一刀夫妻の墓への道ですれ違うのですが――
いくら笠で隠した上に、顔を背けて宝って、すっかり平阿四の顔を忘れてたんですね、苗人鳳。
真正面から来る、父子に見える二人連れの子供のほうが、自分が捜し求める親友の遺児だとは夢にも思わず、墓に詣でた痕をみても、胡一刀に恩を受けた近辺の住民の者だと思ってしまいます。

そんな苗人鳳を突然取り囲んだのは、反清復明と義侠の振る舞いで天下に名を轟かせた『鉄花会』の面々。
これは、例によっての田帰農の英雄同士を争わせて共倒れさせる作戦の一環だったのですが……
というところで、以下次週。
いよいよ、少年胡斐の活躍が見られるかも、


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Comment

なるほど 

人鳳は単なる魯鈍な男とも見えますが、馬鹿正直、女性に縁のなく、思ってる事を口に出せない不器用な男を表現したいのではないかと私は思います。インプリシットには、描いている様に思います。
南蘭の我が儘に、内心では色々あってもそれを押し殺して修業で発散する、酒飲むと思わず愚痴が出てしまうなど。(ただ、火事で妻子より位牌と言うのはなぁ。胡への思いを表現したかったのでしょうが・・・)
また、南蘭も自己中、我が儘ですが、育った環境もあるのでしょうね。
まぁ、現代でもこんな人達はいるもんですよね。
  • posted by 新龍 
  • URL 
  • 2008.09/28 16:33分 
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>打遍天下無敵手
シブシブ名乗っているハズだったような気がするのですが、
(小説だったかドラマだったか失念!)
あれはムナシーですよねぇ…(^^;

苗夫妻みたいなパターン、
現代でも沢山ありますね。
言って欲しい女と、
言わなくても解るだろうの男と、
永遠のテーマのような気もします。
対する胡夫妻は、
同じ目的(江湖の平和?)に目が向いているので、
このような揉め事とは無縁のようですが。
現代社会で調査したら、胡夫妻タイプと苗夫妻タイプ、
割合はどうなんだろう?と思ってしまいました。
普通、武侠ドラマでは家庭内の事ってノータッチなので、
こういう所を丁寧に描いているのは非常に興味深いです。
  • posted by 阿吉 
  • URL 
  • 2008.09/28 18:26分 
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>打遍天下無敵手
苗人鳳の寝台の壁に「字が書いてあるなぁ」とは思いましたが、ちゃんと読んでませんでした。
家訓か何かでも書いてあるのかと思ったら、そんなコトが書いてあったんだ・・・(^_^;)

>子連れ狼の箱車には、相当色々な仕掛けがしてありましたが。まさか、あの猫車には?
そういえば、拝一刀の箱車は仕掛けの宝庫でしたね。
あの猫車にも暗器が仕込んであったらびっくり!(笑)

今回の苗人鳳夫婦の話は、本当に現代にもありそうな話でしたね。
南蘭の(苗人鳳も?)相手に自分の理想を求めるばかりの姿に、思わず我を振り返ってしまいました(^^;ゞ
求めるだけでなく、与えることもなければ、夫婦の絆は深まりませんよね。
胡一刀夫妻の絆が一朝一夕に出来たものではないだろうというお言葉に、もっともだ!と思いました。
  • posted by ふく*たま 
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  • 2008.09/29 16:29分 
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そうかぁ 

女性陣の方々は、厳しいなぁ。人鳳は、言わなくともわかると言うより、夫婦の関係を崩したくない、言いたくても言えないと言う男の言語中枢も理解して頂きたいなぁ・・・
冴えない男の愚痴でした。
  • posted by 新龍 
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  • 2008.09/29 18:34分 
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新龍さんへ 

>まぁ、現代でもこんな人達はいるもんですよね。
はい。居ます、居ます。
苗人鳳は、会社では思い切り優秀なのに、家庭では何も出来ない(場合によっては、電球の交換もできない)お父さんとか、
南蘭は、ブランド志向でカード破産をしかけた挙句、何かのドラマにハマって不倫に走る主婦――ちょっと、例えが現代過ぎますか(^▽^;)

苗人鳳の不器用さというのは、誠実さとイコールな感じで、見ているほうには魅力の一つなんですが、
それを理解できなかった南蘭の精神的な幼さによる悲劇、ということで、
破局の原因としては、原作より、より納得の出来る展開になってるかな、と思います。
(なんか、論点がズレていってる気がしますが、そのへんは、仕事疲れのせいということで、ご寛恕くださいませ)
  • posted by rei☆azumi 
  • URL 
  • 2008.09/29 18:38分 
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阿吉さんへ 

>シブシブ名乗っているハズだったような気がするのですが、
そう、そう。
たしか、胡一刀を呼び出すために、あえて名乗ってるとか言ってましたよね。
(原作とドラマ、両方だった気がします)
立会いは済んだんだから、もう外してもいいのに。

>あれはムナシーですよねぇ…(^^;
あ!
ひょっとして、あえて、そのムナシさを狙ったとか(笑)

>言って欲しい女と、
>言わなくても解るだろうの男と、
>永遠のテーマのような気もします。
そうですね。
ちょっと、『話を聞かない男、地図が読めない女』の中の、
男女間の意識の違いに関する話とか、
ちょっとタイトルを失念しましたが、
家族に対する愛や感謝は、口に出さなければ伝わらないよ、
などということが書いてあった本のことを思い出していました。

器用、不器用以前に、そういうことを知らない人たち、
現代でも、男女を問わず、多いかもしれませんね。

>現代社会で調査したら、胡夫妻タイプと苗夫妻タイプ、
>割合はどうなんだろう?と思ってしまいました。
ううむ……
苗夫妻タイプが多い、という方に1票(投票してどーする(^▽^;)

>普通、武侠ドラマでは家庭内の事ってノータッチなので、
>こういう所を丁寧に描いているのは非常に興味深いです。
そういえば、金庸作品の夫婦って、旦那さんが奥さんを敬って大切にして、家庭円満なところが多いですものね。
思えば、非常に珍しいケースでもあります。
  • posted by rei☆azumi 
  • URL 
  • 2008.09/29 18:53分 
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ふく*たま さんへ 

>家訓か何かでも書いてあるのかと思ったら、そんなコトが書いてあったんだ・・・(^_^;)
そうなんです。
阿吉さんの記事(年年大吉です)によると、猫車の布団にも~ということだったので、注目していたら、あちらには黒で縫い取ってありました。
何だかな~(^▽^;)

>あの猫車にも暗器が仕込んであったらびっくり!(笑)
車輪のすぐ上のあたりから針が連射されて~なんて設定だったら、
笑うしかないかも~\(^o^)/

>求めるだけでなく、与えることもなければ、夫婦の絆は深まりませんよね。
考えてみれば、自分が本当に誰かを好きになったら、その人のために何がして上げられるかって、考えますよね。
夫婦間も、同じじゃないかなと思います。
夫婦だけじゃなく、人と人との絆も、同じかもしれませんね。
  • posted by rei☆azumi 
  • URL 
  • 2008.09/29 19:07分 
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新龍さんへ 

>言いたくても言えないと言う男の言語中枢も理解して頂きたいなぁ・・・
そう言われれば、男の人って恥ずかしがりやさんが多いですものね。
(特に日本男児は(^m^)
ただ、それを理解するには、女性の方も相当に年季を積まないと(笑)

そのかわりといってはナンですが、
“言って欲しい”女性の心理も、理解とは申しませんが、了解くらいはしておいて下さいまし。

照れまくり、あるいは仏頂面での一言が意外にツボ、という女性が多いらしいことも(笑)
  • posted by rei☆azumi 
  • URL 
  • 2008.09/29 19:14分 
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rei★azumi

Author:rei★azumi
ヒト属ネコ科 コタツ猫亜種 読書ネコ
『神鵰侠侶』で金庸にハマった、金庸初心者。
とりあえず、金庸の小説全作品読破を目指すも、突如神鵰侠侶二次小説にハマる。
さて、この先、どうなりますことやら。

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