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血まみれのマリア (きんぴか②)

血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)
(1999/08)
浅田 次郎

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ちょっと、こー (^▽^;)
なかなかに凄いタイトルですが……(でも、面白かったの)


『壬生義士伝』やら『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』と、なかせる小説を書かれる浅田次郎氏ですが、
ひょっとして、笑わせる小説は、もっと得意?
というか、私としては、こっち系の方が好みかも~(笑)





で、この小説、一応は、
(まだ①を読んでいないので、あまり詳しくは知らないのですが)
鉄砲玉として敵対する組の総長等2名を殺して、13年と6ヶ月のお勤めを終えて出所した(つまりは、“その筋の方”である)ピスケン、
自衛隊の海外派遣に反対、たった一人の反乱を起こした末、自決しそこねた、元自衛官の軍曹、
義父でもある大物政治家のおこした贈収賄事件の罪を背負って下獄した、元秘書のヒデ、
の、いわば本道をリタイヤしちゃった3人の男を中心とした悪漢小説(ピカレスクロマン)としてあるんですが~

実態は、何とも純で気のいいお兄ぃさんたちが、巻き起こしたり巻き込まれたりするドタバタといったほうが正解なんじゃないかしら。
(しかも、ある種の痛快さのほかに、ふと心が温まる佳いところもありますし)

だって、ピカレスクロマンらしいのって、ピスケンが競馬でスっちゃった3千万円の穴埋めのために、ヒデが、友人の元・銀行のケアマネージャーと組んで行う詐欺事件くらい。
(ここに銀行間のオンラインを一瞬停止させるというハッキングが絡むあたりが、ミソと云うことでしょうね。ノベルの初版が1998年だそうですから)
(それにしても、1.5メガのデジタル回線を高速といってるあたり、時代を感じさせますなぁ)

表題作にしてからが、描かれるのは、ひょんなことから救急救命センターの名物婦長、“血まみれのマリア”こと安部まりあに恋をしてしまったピスケンの純情ぶりなんですから。

それにしてもピスケン、“組”ではほとんど伝説の存在になってて、若ぇ衆にシブいのスゴいのと騒がれる男なのに、
アヴェ・マリアをまりあさんの作曲だと思い込んで、同居人の軍曹とヒデが気味悪がるくらい、繰り返し聞く、というのはまだしも、
パンチパーマを七三分けにして、料理本片手に、ビーフストロガノフを煮込みながら、マリアさんの帰りを待ってるって……
なにやら、その昔の『トラック野郎』の文太さんを連想してしまいます(笑)

……というピスケンをはじめとして、同居人で仲間である軍曹は、笑った顔がコワい、多分現在カリフォルニア州知事であるシュワちゃんを連想するのが手っ取り早いんだろうなぁ、の健康病のマッチョマン。
で、口調が……武士とか浪人とか云うよりは「失業したお侍」(川原泉さんの言い回しね)と呼びたくなるんだよなぁ、この人の場合。
(でも、多分ピスケンに輪をかけたくらい純情で、かなり佳い男です)

で、唯一マトモで渋そうに見えるヒデさんだって、3人と同じビルに住んでるマムシのゴンさんこと向井権左衛門という退職刑事さんに「忘年会だ。熱海で宴会だ。芸者だ」と言われると、反射的にバンザイをしてしまうという人。
(てことは~誰がイメージに合うかなぁ? メガネが似合って、エリートっぽい渋い人)

と、このような主要人物に、さらに無茶な脇役~

ヤな奴だけど優秀でもあるので、一皮向いてやろうかと、マムシのゴンさんと、その幼馴染の警視総監にハメられて、ピスケンたちとロシアンルーレットまでやるハメに追い込まれるエリート警視正やら……『嵐の夜の物語』

銭形平次と人形左七の子孫で、もの凄~く鼻は利くんだけど、超絶不器用な二代目銭形左七刑事に、
アルツハイマーで、なぜか洗面器をかぶって入院中の天政会総長、
ホホホ……と品よく笑ってお手前なんかしてたのが、お妾さんから届いた麻薬を目にした途端、諸肌脱いで羽衣の刺青なんか見せて、
「おっと、こいつァとんでもねえ小女郎(こめろう)だぜ」
なんて伝法な口調に戻っちゃう、組長の正妻さん。
(そういや、“極道の妻”だもんなぁ)etc……  『クリスマス・ロンド』

が絡んできて、しかも、ストーリーときたら、
こんなんアリですか? さすがにナシでしょ?
なんて荒唐無稽~~いや、まともなストーリーでも、こういう登場人物が絡んでくると、無茶苦茶になりますかな~
軍曹あたり、ごく普通に会話してても、なんか笑いが取れちゃうし(^▽^;)

と云うところへ、これまだ、浅田さんの、こう云う小説独特の言い回し、

 ドアチェーンがブツリとちぎれた。そして次の瞬間、軍曹は大きな瞳をシンバルのように見開いて立ちすくんだのである。
 上がりがまちには、金ツボマナコを火焔太鼓のように見開いた男が、立ち尽くしていた。
「く、くらた……」
「ぐ、ぐ、ぐんそお……」
 ドアの外で風が鳴った。氷の森に、二人の男は長い間、立ち尽くしていた。

……『カイゼル髭の鬼』

…………………………想像しちゃいましたよ。氷の森。ヒョォォォォ……なんて、擬音つきで。(しかも、ジャンプ風の絵で(笑)


 ニラみには自信があった。眼光は鋭く、体毛はあくまでも濃く、大工というより森の木コリの趣があった。昨年の夏、山中でヒグマを格闘の末たおしたときなど、遠目にみていた子分たちには、親分が勝ったのかヒグマが勝ったのかわからなかったほどである。やがて血まみれの親分を肩に担いだヒグマが姿を現して、子分たちは真っ青になって逃げ帰ったが、実はヒグマを肩に担いだ親分であった。
 要するに会議の席へ連れて行くのは、古万でもヒグマでもどっちでもよかったのだけれども、ヒグマよりむしろ古万のほうがインパクトが強いと判断して同行を求めたのであった。

……『天使の休日』

ちなみにここ、「北海道の熊」と云うタイトルの章ですが、僻地の村がリゾート開発されて変わって(で、村人が潤って、JRが赤字を出してゆく)ゆくさまが淡々と描かれていて、非常に笑えます。

と云う小説に、なぜ私が手を出したかと云うと、
実はタイトルロールになっている血まみれのマリアさん、浅田センセイの別の小説『プリズンホテル』の夏編だか秋編だったかにも登場していて、それはもう、格好良かったんですよぉ。
(浅田さん、アネゴ肌の格好良い女性を描くのも上手いですものね)

と云うことで、これを見て興味の出た方は是非~
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Comment

興味出ました~! 

面白そうですね!
泣かせるより笑わせる方が大変、と言いますが、
キャラ設定を聞くだけでも面白そうです♪
実は「トラック野郎」の一番星好きなので、
ぜひ読んでみたい!

①をすっとばして②から読んでもOKなんですねw
  • posted by 阿吉 
  • URL 
  • 2009.05/16 20:32分 
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初っ端から、この本のタイトルを
血まみれのマリア―きんぴらって読んだ私って・・・( ̄∇ ̄;) ハッハッハッ

それにしても、個性豊かな登場人物というには、既に度を越しているような面々(笑)この方たちがどう、絡んでいくのか
・・ある意味、絡まなくても、その人たちの事、書いているだけでも楽しめそうな作品ですねぇ~。

 最後の~やがて血まみれの親分を肩に担いだヒグマが姿を現して~実はヒグマを肩に担いだ親分であった。
にあ、思わず噴出しちゃいました (*^m^)=3 プー!!

 またまた、読みたい本リストに追加ですわ♪
って・・既に、リスト書き出したから数年? 一向に減ることなく増える一方なのは何故?(笑) まぁ、本は逃げたりしないし♪気長に行きます ニャハハ (*^▽^*)
  • posted by 氷無月  
  • URL 
  • 2009.05/17 00:45分 
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  • [Res]

阿吉さんへ 

> 泣かせるより笑わせる方が大変、と言いますが、
そうなんですよね~。
このあたり、浅田先生の上手さと云うか達者さ、感じさせます。

> ①をすっとばして②から読んでもOKなんですねw
はい。短編集ですから、②からでも、何となく人物関係は把握できます。
ただし、②を読むと、確実に①が読みたくなります。

と云うわけで、買い物に行ったついでに、①と③を買ってきちゃいました。
②も、図書館に返したら、改めて買いなおす予定ですので、
よろしかったら、同じ浅田さんの「天切り松」あたりと一緒にお貸ししますよ~

ちなみにピスケン、やはり文太さんがイメージだそうです。
  • posted by rei★azumi 
  • URL 
  • 2009.05/17 19:19分 
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氷無月さんへ 

きんぴら……
マリアさんが好きそうですねぇ。
ビーフストロガノフ嫌い、鮭茶漬け食べた~い。なんて言ってましたから。

> ・・ある意味、絡まなくても、その人たちの事、書いているだけでも楽しめそうな作品ですねぇ~。
まさに!
というか、普通に生活を送ってるだけでも、何やら笑いを取ってしまうような人々です。
(実在したら、迷惑この上ないですが (^▽^;)

>  最後の~やがて血まみれの親分を肩に担いだヒグマが姿を現して~実はヒグマを肩に担いだ親分であった。
> にあ、思わず噴出しちゃいました (*^m^)=3 プー!!
でしょ。笑えるでしょ (*^m^*)
こういうノリの文章が随所にあったりして、
でも、所々、ホロリとさせるところもあったりして、
ワタシ的には、しっかりツボでございました。

>  またまた、読みたい本リストに追加ですわ♪
> って・・既に、リスト書き出したから数年? 一向に減ることなく増える一方なのは何故?(笑) まぁ、本は逃げたりしないし♪気長に行きます ニャハハ (*^▽^*)
この本は購入して手許に置く予定ですので、読める時期が来たら連絡下さいね。
お貸ししますよ~
  • posted by rei★azumi 
  • URL 
  • 2009.05/17 19:27分 
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  • [Res]

太好了~! 

>よろしかったら、同じ浅田さんの「天切り松」あたりと一緒にお貸ししますよ~

ありがとうございます!
毎度、皆さんにおにぎりを貰って生きている私で申し訳ないですが、ご厚意に甘えさせていただきますm(_ _)m
いつでも良いですので、お願いします♪

で、私の方も映画「風雲 ストームライダーズ」DVDを入手しましたので、漫画「射英雄傳」の7・8巻を今月末に購入したら、一緒に4~8巻も送りますね!
  • posted by 阿吉 
  • URL 
  • 2009.05/18 19:34分 
  • [Edit]
  • [Res]

阿吉さんへ 

>太好了~!
あらま! こんなに喜んでいただけるなんて(*^_^*)

では、②を購入し次第~と云っても、綿の方も、月末くらいになりそうですが。

> で、私の方も映画「風雲 ストームライダーズ」DVDを入手しましたので、漫画「射英雄傳」の7・8巻を今月末に購入したら、一緒に4~8巻も送りますね!
あら~。
こちらこそ、申し訳ないです。
でも、嬉しい (*^_^*) 
ありがとうございます。
でも、「射雕~」私に貸すからって、大急ぎで読んだりはなさらないで、
じっくり楽しんでからにして下さいね。




  • posted by rei★azumi 
  • URL 
  • 2009.05/19 18:28分 
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Author:rei★azumi
ヒト属ネコ科 コタツ猫亜種 読書ネコ
『神鵰侠侶』で金庸にハマった、金庸初心者。
とりあえず、金庸の小説全作品読破を目指すも、突如神鵰侠侶二次小説にハマる。
さて、この先、どうなりますことやら。

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