鳥姫伝

今日は七夕~
と云うことで、それに関連した本。
アメリカ人であるバリー・ヒューガート氏の手による中国風異世界ファンタジー『鳥姫伝(ちょうきでん)』のご紹介です。

鳥姫伝 (ハヤカワ文庫FT)鳥姫伝 (ハヤカワ文庫FT)
(2002/03)
バリー ヒューガート

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物語の主人公~と云うか、語り手は、陸羽(ユー・ルー)通り名を十牛(じゅうぎゅう)と云う若者。
この十牛の住む村の、八歳から十三歳までの子供が、ある日突然、バタバタと倒れたことから事件は始まります。

子ども達が倒れたのは、疫病か、それとも悪鬼の仕業か。
どちらにしても、賢者に力を借りるしかないといわれた十牛、養い親の花(ファン)おばさんの大事なへそくり、銭五千を託され、北京へと向かいます。
そうして、散々、あちこちで門前払いを食った挙げ句に出会ったのが、七十八年前の状元(科挙の第一位合格者)で、現在はボロボロの小屋で酔いつぶれていた李高(リー・カオ)。綽名を“玉にきず”というご老体。

この李高老師と共に、子供たちを癒す人参の女王“大力人参”を探しに出かけた十牛ですが、
この人参、右腕、左脚、胴、といった具合に、バラバラにしてあちこちに隠されており、
そうして、その人参を探す旅は、いつの間にか、伝説から消された女神、鳥姫が、不老不死を望む秦王に奪われた、彼女に神性を与えていた黄金の冠と三枚の羽根、そして鳥姫自身を探す旅と重なってゆきます。

  と云う物語が、どうして七夕と関係があるのかといいますと、実は、この鳥姫・翠珠(すいじゅ)が、織女の役割。
で、この物語の中では、牽牛は天帝の甥。銀河の星の運行を司っております。
が、あるとき、下界に魅力的な人間の娘を見つけてしまった牽牛、下界へ降りていって、娘さんと楽しく過ごし、星たちのことは放ったらかし。
(で、交通整理役がいないので、星たちは傷だらけ)
このことを知った天帝、怒り来るって下界へ降りてゆきますが、見れば、相手はなるほど甥っ子が夢中になるのが納得できる、魅力的な娘。
そこで天帝、翠珠に不老不死になる桃を与えて女神とし、三枚の羽根をつけた冠を与え、
普段は下界で暮らし、7月7日になったら、この冠の力を使って鳥たちを呼び集め、下界から天上界へと橋を掛けさせ、それを渡って牽牛に逢いに来るようにと命じます。

……と云う、これがこの作品世界の七夕伝説で、中国全土の鳥たちが集まって、緑の枝で橋を掛けるシーンが、作品のクライマックスの一つなんですが、これが、なかなか壮観。
で、本家の七夕伝説の、カササギの掛ける橋どころの騒ぎじゃないです。
なんせ登場するの、鳳凰から鷲に鷹、白鳥に鶴に燕に梟に  果ては大鵬金翅鳥(たいほうこんじちょう)までが登場しますから。

と、壮観といえば、十牛と李高老師の大力人参を求めての冒険も、
砂漠から地下迷宮、水没した街から、どこかの牢獄まで、ヘリみたいな乗り物を作って空をとんだり、水にもぐったりと、さながら、インディー・ジョーンズか、ハムナプトラかの大冒険。
しかもここに、中国的絢爛さが加わったりもするので、中国モノ好きとしては、もう、クラクラ(笑)

しかも、登場人物が知恵者だけれど、思い切りさばけている李高老師(洪七公師匠に、う~んと年をとった韋小宝をパラパラと振りかけた感じかなぁ?)は無論のこと、
秦王の財産官で税の取立て人である、超小心者の兎鍵(とけん)と、
おっとりと愛らしいのに、翡翠と真珠には目がない、多情な(と思われている)その妻・蓮雲(れんうん)
(恋人のことを“もうもうちゃん”だの“おおかみちゃん”だのと呼ぶ女を相手にするのは、ちょっと考え物じゃと思うんじゃがなぁ  李高老師 談)

高祖娘子という隠居した則天武后みたいな老女の娘婿になっちゃったせいで、伝説の収集だけを楽しみに生きている、とっても不幸な、博識で心優しい侯恐妻(ホウ・きょうさい)
(ここに、悲恋物語が一つ、入ります)

秦王に殺された愛娘の供養の為が、いつの間にか守銭奴になってしまっていた、心優しい、けちんぼ沈(シェン)

盗賊に殺された愛妻を生き返らせようと、研究を続けている錬金術師の死神方士、等々、
魅力的なキャラクターも満載です。
(しかも、ある人物と、ある人物の意外な正体~といいう、お約束の展開もあって)

と云うことで、この本、私のお気に入りの一冊です。

ちなみに、このバリー・ヒューガート氏の本『霊玉伝』と『八妖伝』との3部作になっておりまして、
いおう、時代は唐代と云うことにはなっていますが、
『霊玉伝』では、『紅楼夢』がベースになっていたり、“あの” 潘金蓮  水滸伝の行者の武松の兄嫁で、『金瓶梅』のヒロイン  が、すでに故人で、妓女達の守り神になっていたり、
『八妖伝』の方では、宮中に珍妃の井戸があったりもしてますが~

別に、この程度は作品の価値を云々するものではない~というか、
これに気付いた時に私が思ったのって、
「いいなぁ、○○風ファンタジーってのは、中の設定を自由に出来て」
と云うものでした。

と云う次第で、この本、私のお気に入りの一冊です。





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コメント

No title

わぁ、面白そうですね!
アメリカの方も中華なファンタジーを描かれるとは!
…いや、日本人だって中国人じゃないけど、なんかどっかで同じアジア人だったら共通する部分もあるのかな~と思う自分がいるわけで(勿論、それは幻想なのですが)

>時代は唐代と云うことにはなっていますが、
ハハハ(^^;
確かに、ファンタジーと言いきって、作品自体の持つ面白さが十分であれば、少々のことは…!?
で、話の展開とかゴージャスな感じです!

今、バリー・ヒューガートさんのwiki見てきたんですが、もう執筆活動はされてないんですね。西洋人の描く中華ファンタジーというジャンルに興味があったのになぁ…

阿吉さんへ

はい。面白かったですよぉ~
というか、このシリーズも、阿吉さんの好みかも知れません。
中国“風”ファンタジーといいながら、ヒューガート氏、中国の文学や思想についてなど、相当詳しい感じですし。
(これは、ご本人の東洋好きもあるでしょうが、相当勉強もされたんでしょうね)

>日本人だって中国人じゃないけど、なんかどっかで同じアジア人だったら共通する部分もあるのかな~と思う自分がいるわけで
特に日本は、中国、韓国からの影響を大きく受けていますかものね。
なので、日本人が中国を舞台にした物語を書くのは、たぶん、誰も不思議には思わないのでしょうが、
アメリカの方が、それも、これほど見事に中国的世界を書き表されたって、驚きでした。

よろしければ、今度、3冊まとめてお送りしますね(^_-)-☆

>今、バリー・ヒューガートさんのwiki見てきたんですが、もう執筆活動はされてないんですね。
まぁ! それは残念。
この李老師と十牛のシリーズ、当初は7部作の予定だったのが、出版社との行き違いやゴタゴタで、3部作に終わってしまった、というのを『霊玉伝』の後書きで読んで、非常に残念な思いをしましたが、
現在、その時と同じくらい残念な気持ちです。
ヒューガートさん、また、書く気になってくれないかなぁ。

No title

実は、昨晩コメント記入をしたのですが(しかも・・かなり長文) 送信?を押したところで、認証画面に切り替わる前に、うちのPCの不具合で、フリーズしてしまい・・そのまま、抹殺されました(泣)
なので、昨晩は、意気消沈したまま・・退散しましたの ( ̄∇ ̄;) ハッハッハッ
 ・・と、前置きは、これくらいに・・。
この表紙の女性、めっさ、好みです(笑)
私は、どちらかというと、歴史物でも、ファンタジー要素の強いものが好きなので、これは、良いかも・・っていうか、ごめんなさい、どうしても、あの・・
錬金術師&死神・・ときたら、朴ボイスの二人(エド&冬獅郎君)が頭の中で二人仲良く肩組んで、脳内を歩き回るのですが・・・(笑) 
 とはいえ、私最近、本当PC前にくると・・相変わらず(´-ω-`)))コックリコックリ なので、長時間居座れないんですよねぇ~。PC画面から、何かそういう成分が散布されてるのでしょうか・?(笑)
 

No title

面白そうですね!
西洋人の書く中国風ファンタジーというと『ドラゴン・キーパー』(これも3部作ですが、今はまだ2部しか出ていません)を読んだことがありますが、これもなかなか面白く、西洋人で中国を舞台にコレだけのファンタジーが書けるのか、と感心しました。
でも、これは児童書なので、多少物足りない部分もあり、そういう面では、reiさんが紹介されている本の方が読み応えがありそうです。

氷無月さんへ

あらま! 
PCがフリーズとは……
折角の長文のコメント、残念でした~
よしよし(,^^)/(T-T)うるうる
(どんな内容だったのかなぁ)

>この表紙の女性、めっさ、好みです(笑)
奇麗でしょう。
後の2作の表紙も、美しいですよ~。
内容も、色んな他所のごった煮で、面白いですし。

>錬金術師&死神・・ときたら、朴ボイスの二人(エド&冬獅郎君)が頭の中で二人仲良く肩組んで、脳内を歩き回るのですが・・・(笑)
うふふ……
やはり、そうなりますか。

ま、私の場合も、“全ての道は、楊過に通じ”てしまうわけなので、そういうのもアリでしょう(*^_^*)
(エド&冬獅郎クンの共演で、二次小説は不可能でしょうか?)

>私最近、本当PC前にくると・・相変わらず(´-ω-`)))コックリコックリ 
ううむ……。
眠っているネコが、周囲に“おねむ波”を振りまいているというウワサは、聞いたことがありますが、
稼働中のPCは……

はっ! そういえば、最近はPCの前に座ると、急激に記事を書く気力がなくなるので、
ひょっとしたら、本当に、そういう成分が出ているのかも! (~_~;)

ふく*たま さんへ

『ドラゴン・キーパー』検索してみました。
こちらは、漢代の中国風異世界が舞台なんですね。
図書館にもあることだし、借りてみようかなぁ。

こちらの、バリー・ヒューガート氏は
(現在、勢いがついて、読み返しにかかっているのですが)
まさに博覧強記!
中国への知識が深まれば、深まるほど、より、凄さがわかるというか、良く、ここまで調べてかかれたものだというか~そういう作品です。
それでいて、決して硬くならないあたりもね。
この方に、もっと作品を発表する機会を与えなかった、アメリカの出版会って! \(*`∧´)/ ムッキー!!

ありがとうございます…ですが

>よろしければ、今度、3冊まとめてお送りしますね(^_-)-☆
ワ~ン!いつもありがとうございます!
でも、ちゃんと図書館検索したらありました!
ついでに、今更ですが、「きんぴか」もちゃんとあったのでした(^^;
reiさんとお近づきになりたいばっかりに、本を貸していただいたりして、かたじけなかったです!(←ヤラシイ奴)
…という事で、今回は真面目に地元図書館利用します!
ありがとうございま~す!
ちなみに、「ドラゴン・キーパー」もありました!
お陰さまで、先のお楽しみが増えましたよ!フフフ!

そうそう、今日、漫画の続きとその他、図書館になさそうな本をお送りしました~!

阿吉さんへ

>ちゃんと図書館検索したらありました!
おお! それは、良い図書館ですねぇ。
ウチのほうは~と、ためしに検索してみたら、ありませんでしたもの。

>reiさんとお近づきになりたいばっかりに、本を貸していただいたりして、かたじけなかったです!(←ヤラシイ奴)
いえ、いえ、そんな!
私も、ブログ以外の部分で阿吉さんとお近づきになれて、嬉しかったですもの。

では~
気が向いた範囲で、蔵書(と云うほどたいしたものではありませんが)公開みたいなものを書いてゆこうかと思っていますので、
そんな中で、図書館に無さそうな本がありましたら、気軽にお申し付け下さい。
(って、通販ですか、わたしゃ(笑)

>そうそう、今日、漫画の続きとその他、図書館になさそうな本をお送りしました~!
ありがとうございます!
楽しみにしています。

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