秋水長天

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蘭陵王(らんりょうおう)

蘭陵王蘭陵王
(2009/09/26)
田中 芳樹

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田中さん久々のオリジナルの中国モノ。
と云うことで、新聞の書籍広告欄で見つけて、早速書店に走りましたらば~
まぁ、8割がたは予測してたんですけどね~。やっぱり、置いてないんだものな~。

なので、やむなくお取り寄せ(笑)
台風やら何やらで、昨日(10月10日)やっとこさの入手となりました。
(『三国志』や『水滸伝』関連だけじゃなく、こういう本も、書店に並べておいて欲しいものなんですけどねぇ)


さて。

時は中国の南北朝時代の末~
と言ったって、中国史に興味の無い人には、いつのころかさっぱりわかりませんわな。

ええと、中国の歴代王朝をざっと並べると、
殷 周 秦 漢 三国 晋 南北朝 隋 唐 五代 宋 元 民 清 中華民国 中華人民共和国
だそうで、
このあとの隋の成立が、巻末の年表によると598年だそうですから、まあ、ざっと、そんなころ。

で、タイトルにもなっています主人公の蘭陵王は、北斉の皇帝の親族。
武勇と美貌で知られた将で、その美貌を侮られるのをいとって奇怪な面で顔を隠して戦場へ赴いたと言います。
そうして、その武勇と人望を妬んだ皇帝(従弟になるんですな)によって毒殺されたという、悲劇の貴公子でもあります。

と云うのを、チラホラと、あちこちで書いておられたのも、田中さんご本人で、
なので、田中ファンとしては、ついに出たか  と云うか、やっと出たか! の、待ちかねた1冊。
なので、手にした途端に一気読み~
の、ハズだったんですが……
読んでたら、しんどくなって、途中で休憩~ (^_^;)

描かれているのは、蘭陵王の名が敵味方に響き渡るようになる最初の戦から、昏主こんしゅによって毒殺されるまでの10年足らずと、その後の斉の滅亡までで、
国が滅びるときの話ってのは、当然、読んでてかなりしんどいエピソードが多いわけなんですが、

なんていうのかなぁ……
皇帝が、この蘭陵王が活躍した時代の皇帝、蘭陵王の叔父に当る武成帝と、その息子の無愁天子の2人なんですが、この2人が揃いも揃って暗君、昏主というもおろかなバカ皇帝。
で、昏主なら昏主らしく、酒色にだけ溺れててくれればまだ始末がいいものを、
身内の出来のいいのとか、人気のあるのとか、祖父の代からの国の重鎮とかを次々と惨殺(撲殺とか絞殺とか)してゆくんだから、もう、たまったもんじゃないです。
(悪役キャラでも、本気で嫌うことって少ないんですが、この2人に関しては、もう、バカ皇帝ども、早く死んでしまえ~! って感じで読んでました)

また、この北斉の皇帝の一族ってのが、初代はともかく、あとは天寿を全うしたのっていないんじゃないの? の短命と言うか、呪われた一族。
と云うか、初代が子孫に回るはずのの運を全部使い果たしてったんじゃないかって云いたくなるくらいの、ものすごさ。
(なんせ、息子4人は、暗殺に事故死に急病死。孫の代(蘭陵王の世代です)に至っては、人の手に掛かってないのは3人くらい? と云う次第で……)
(しかも、敵じゃなくて身内に殺されてるほうが多いってのは……(-_-;)

(こんな中で戦場に出されて、手柄を立てなきゃ罰せられるだろうし、手柄を立てすぎても妬まれてヤバいって云う蘭陵王の人生って、かなりシンドかったのでは……)

話の半分くらいが戦争でしたしね。

と云う中で、ヒロインの徐月琴の存在  
この女性、北斉の宰相の娘  と云っても、母の身分が低くて、産まれる早々、母共々屋敷から追い出され、道姑(女道士)としての修行中に、身勝手な父親に、蘭陵王への密偵とすべく屋敷へ呼び戻された、という女性ですが、
これが、明朗闊達、独立独歩、食欲旺盛(笑)ユーモアのセンスも独特と云う、典型的な田中キャラ。
父親の言いつけということではなく、偶然に出会った蘭陵王自身に魅かれ(蘭陵王自身も、月琴に心引かれたようで)自分の意思でその屋敷に赴き、彼の短い生涯の最後の10年近くを共にするのですが、
この女性の存在と、蘭陵王との関係が、さながら一服の清涼剤でした。

田中作品のキャラにしては珍しく、バランスの取れた人格に見える蘭陵王が、この月琴と一緒にいると、チラホラとユーモアの感じられる発言をしますし。
なんせ、敵陣に向かう岸壁を眺めながら、
「これは、月琴娘でも猿でも登れまいなあ」
ときちゃいますから。
(で、しばらく月琴、『猿』にこだわってます(^m^)

それにしても田中サンって、世の常のかたちの男女の恋愛ってのは、全く書かない人なんですねぇ。この2人の間柄も、性別を超えた親友というか、ごく親しい部下と上司  なんか『銀河英雄伝説』のヤンさんとフレデリカを連想してしまいました。

あと、ここしばらく『隋唐演義』とか『岳飛伝』とかの翻訳モノみたいなのは出てましたけど、オリジナルの中国ものは久々なので、何か変化があるかな~と思いながら読んでみたら、
月琴が蘭陵王との出会いの場となる銅雀台(曹操の作らせたアレです)に向かうのに、軽功らしきものを使ったり、
鬼面をつけた蘭陵王に、「怪しいやつ!」と問答無用で蹴りかかったり、
戟の上に片足で立ったりと、武侠小説の影響? らしいシーンも、チラッと出てきました。

で~
じつは、この少し前の『アルスラーン戦記』とか『薬師寺涼子の怪奇事件簿』などを読んだ感触から、さすがの田中芳樹センセイも、ちょっとパワーが落ちたかな、などと失礼な感想を抱いていたのですが……

これは、得意とされる中国ものだからか、それとも、物語(と云うか、歴史ですかね)自体にパワーがあるのか、
(特に最終章の斉の滅亡に至るまでの勢いとか)
結末の爽やかさも加えて、期待通りの読みごたえでした。

あっ、そう、そう。
食べ物に関する記述が豊富なのも、相変わらずで~♪
羊と人参はともかく、干し葡萄の入った焼飯とか、ゴマ入りの餅で牛肉、鴨肉、ネギ、白菜などを包んむのって、ちょっと食べてみたくなります(^^ゞ


で~
この時代と云うのも、三国志に負けないくらい面白いので、どなたかに書いていただきたいと、田中先生、後書きで書いておられますが、
私は是非、田中先生本人に書いていただきたいなぁ。
だって、わかりやすさと面白さが、段違いなんですもん。

あと、余談になりますが、これも後書きで書いてあります、舞楽で演じられる『蘭陵王』
(『陵王の舞い』のほうが通りがいいかも?)
これ、1回だけナマで、それも直近で見たことがありますが、なかなか勇壮な感じで(と云っても舞楽ですから、例のゆ~ったりした感じですが)よかったですよ~。

と云うことで、大急ぎで読み終えた後の、大急ぎの感想でした (^^ゞ
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Comment

 

私も読みました!面白かったです!

>読んでてかなりしんどいエピソード
確かに、酷い話が多くて、
胸糞悪くなりますよね(^^;

徐月琴、私も好きでした!
彼女との絡みが無かったら、
かなり鬱鬱とした話になってたかも…

>世の常のかたちの男女の恋愛ってのは、全く書かない人なんですねぇ。
英雄、色を好む、ではないんでしょうねw
でもそこが魅力なんだろうな~、
と思った次第です(^^)
  • posted by 阿吉 
  • URL 
  • 2009.10/17 16:18分 
  • [Edit]
  • [Res]

阿吉さんへ 

読まれましたか!
田中さんの中国もの、手馴れた~というか、安定感があっていいですよね。

> 確かに、酷い話が多くて、
> 胸糞悪くなりますよね(^^;
そうなんですよ~。
途中で、マトモな人が皇帝になっても、早死にしちゃうし (-_-;)

> 徐月琴、私も好きでした!
> 彼女との絡みが無かったら、
> かなり鬱鬱とした話になってたかも…
はい。実にいいキャラで、
本当に、彼女の存在が救いでした~

> 英雄、色を好む、ではないんでしょうねw
> でもそこが魅力なんだろうな~、
> と思った次第です(^^)
そういえば、『マヴァール年代記』という歴史ファンタジーみたいな作品にも変わったカップルが登場して、こちらは結婚まで行くんですが、やはり普通の恋愛形態ではなく『同志』と云った感じ。
そういうカップルが得意なのか、そういうカップルしか書けないのか……(^▽^;)
  • posted by rei★azumi 
  • URL 
  • 2009.10/18 18:04分 
  • [Edit]
  • [Res]

田中さんといえば 

(すみません、この本自体は読んだことが無いのですが)
田中芳樹さんといえば、私は中学校のころ(←いつだ^^;)))創竜伝というシリーズを読んでました。
さらに、田中芳樹先生ファンの子と一緒にバレンタインデーのチョコを送ったら、先生から、お返しのクッキー(とサイン←これは多分コピーだったんじゃないかな)が届いた記憶があります。いったいどんな情熱だったんでしょうね~~(^^)という、そんな出来事を、rei★azumiさんの記事を読んで思い出しました。記事を読んで、私も、もう一度、田中芳樹さんの本読んでみようかな~という気分です。
  • posted by Chiepy 
  • URL 
  • 2009.10/23 09:12分 
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  • [Res]

Chiepy さんへ 

コメント、ありがとうございます。

創竜伝、私も読んでます。
特に、北宋初期の開封が舞台になっている12巻は、今でも座右で(笑)

> さらに、田中芳樹先生ファンの子と一緒にバレンタインデーのチョコを送ったら、先生から、お返しのクッキー(とサイン←これは多分コピーだったんじゃないかな)が届いた記憶があります。

おおっ! 田中サン、律儀!
そういえば、バレンタインチョコを下さった読者の方には、ささやかながらお返しを~と、本の後書きで書いておられましたっけ。

>いったいどんな情熱だったんでしょうね~~(^^)

いや、いや。あるものですよ、そういう時期が(^_^)
私も、何人かの作家さんに、一生懸命ファンレターを送った時期がありましたもの。

>という、そんな出来事を、rei★azumiさんの記事を読んで思い出しました。記事を読んで、私も、もう一度、田中芳樹さんの本読んでみようかな~という気分です。

あら! それは光栄です(^m^)
歳月を経て(?)読んでみると、当時とはまた違った感想が、きっと出てきますよ。
  • posted by rei★azumi 
  • URL 
  • 2009.10/23 18:36分 
  • [Edit]
  • [Res]

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Author:rei★azumi
ヒト属ネコ科 コタツ猫亜種 読書ネコ
『神鵰侠侶』で金庸にハマった、金庸初心者。
とりあえず、金庸の小説全作品読破を目指すも、突如神鵰侠侶二次小説にハマる。
さて、この先、どうなりますことやら。

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