秋水長天

 遊子帰客 夢断故郷雲水之間    西風古道 回首一片秋水長天

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浣花洗剣録 二次小説 永遠へ  -脱塵-

 愛しい木郎あなた
 許してとは言わないわ。
 わたしにはこれしかすべがない。
 あなたの魂を解き放ち、わたしたちが共に救われるためには、これしか方法がないのだもの。


 ああ。どうしてあなたを愛してしまったのかしら。
 どうして天は、わたしたちを出会わせたのかしらね。
 出会い、愛し合い、結ばれる定めを与えておきながら、添い遂げられる定めだけは与えてくれなかったのかしら。
 いいえ、今更天を恨むのはやめましょう。わたしたちが愚かだっただけなのだから。
 使命を果たしたら、理想とした生活に入ろう。あなたはそう言ったわね。
 多くの人の血と屍の上に築かれた理想郷。その屍の列には、可愛い奔月や恩を受けた紫衣侯に聖母、そして何より私たちの大切な義兄弟の大臧も加わっている。
 そんな世界を与えられて、わたしが幸せになれると思っているの?
 逆らうな、何も言うな。あなたは言ったわ。そんな、心を持たない人形のようなわたしを愛して、あなたは幸せになれるのかしら。
 あなたには、そんなことさえわからなくなってしまった。
 いいえ。思えばわたしたちは、常に心をすれ違わせてきた。
 わたしがあなたのためを思ってしたことは、あなたの誇りを傷つけた。
 そうして今、あなたの愛はわたしを傷つける。
 思えば……わたしたちが結ばれたあの夜でさえ、わたしたちの心は――あなたの想いは違う方向に向かっていたのね。
 一人で生きてゆけ、そうあなたが言ったのは、白水宮壊滅の使命を果たし、木郎神君の仮面を捨てて、本来の――朝廷の冷徹な官吏に戻る決意を定めていたから。密かにわたしに別れを告げていた。
 どうなっても、どれほど変わってもあなたを愛するとわたしに誓わせたのは、今のあなたの姿を見れば、わたしが心変わりすると知っていたから。
 そうして、それに気付かないほどに、わたしは愚かだった。
 ええ。そうよ。あなたが朝廷の人間だと史都が忠告してくれたときも、愛に目をふさがれて、それを退けてしまうほどに、わたしは愚かだった。
 後悔しているか? ええ、後悔していますとも!
 わたしたちの辿った道。どこかで一歩を違えていたら、違う結果になったかもしれない。
 それでも、もう一度人生をやり直して、再びあなたと出会ったら、きっとわたしは、又あなたを愛してしまう。
 そうよ。愛している。どうしようもなく愛している。
 愛は消えたといったけれど、あれは嘘。
 だって変わってしまったあなたの中に、わたしの愛した木郎が見えるもの。
 わたしを求めて、傷ついて、血を流している本当のあなたが、小さな小さな残り火のように、見えるもの。
 だから、解き放って、救ってあげる。
 そうして、あなたに約束した通り、永遠にあなたに寄り添っていましょう。
 お前への想いは、すべて真実。あなたは言うのね。お前への想いだけは。そう、繰り返し。
 わかっている。信じている。いいえ、知っている。愛しているわ。
 そんなことさえ、お互い口にしなければ通じないほど、わたしたち心をすれ違わせてしまった。
 いいえ。最初から、そうと気付かないまま、わたしたちの心はすれ違ってきたのよね。
 ならば――
 わたしたちの心が本当にひとつだったのは、共に死にましょうと手を取り合ったあの街角。それとも、道士たちに捕らえられ、死を覚悟しながら過ごしたあの何日間かしら。
 そのときに死ねていたら、そのほうが幸福だったかもしれない。
 だから――決めてしまったのよ。
 怖がらないで。約束通り、わたしはあなたと一緒にいる。ずっとそばを離れない。
 何があっても。どこへ行っても。

 大臧。そんな顔をしないで。悲しまないで。
 あなたと珠児のことが、ずっと自分のことのように気がかりだった。
 珠児と……幸せになってね。
 わたしたちのことは忘れていい。
 わたし、来世は望まない。だから、これが永遠のお別れ。
 わたし――わたしたち、望んだ平安の中に入ってゆくのよ。
 安らかな、ふたりだけの世界。
 そこでは、人を傷つけることも、傷つけられることもない。
 そこでふたり、幸せになるのだから。

 木郎。あなた。ああ……先に逝ったのね。
 待っていて。わたしもすぐに行くから。
 見えるわ。果てしない草原。
 風にうねり、ざわめきながら、どこまでも広がる草の海。
 あの草の海の向こうで、木郎がわたしを待っている。
 そこでわたしたち、永遠に一緒になるの。


 ああ。草原を渡る風の音が聞こえる。






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| 浣花洗剣録 | 2013-02-27 | comments:0 | TOP↑















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